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一流を目指す分岐点

久々にブログを更新するが、後にも先にもここまでの長文はなかっただろう。
先日の出来事で寝ても覚めてもこの事を記録しておこうと思ったので書くことを決意した。

目次
・一流プレーヤーへの分岐点
・ゴルフはスポーツで唯一審判がいないスポーツ
・一気に転落した女子プロゴルファーのマインド(実話)
・全中覇者!我満 龍治選手の成功マインド
・それぞれのマインドはそれぞれのプレーに現れる
・アスリートの人生を左右するチャンス

【一流プレーヤーへの分岐点】
先日おこなわれたジュニアオリンピックのレース中、審判をしていた私の無線にゴールハウスから「女子の選手で牧野 桃(まきのもも)選手(新潟県)が「片足不通過」を自己申告してきました。」と連絡が入った。
それも2本目の出場資格者が決定した後にだ。

実際に旗門員から提出される失格者リストに牧野選手の名前は無く、このまま黙って2本目に進めば、念願の優勝に向けたレースを展開できるはずだった。

しかも牧野選手は1本目1位のタイム。
中学3年の最後の大会でこのビックタイトルはどうしても欲しいところなのだ。

片足不通過とは、本来両スキーがゲートを通過しなければならないが、左右のスキーの中にゲートが入ってしまう事で不通過とみなされてしまう判定ルール。
意図的にやる選手などいるはずもなく、この事は「攻めの結果の事故」と言われている。

写真は他の大会のもの

本来選手は片足が不通過と判った時点でスイッチバック(不通過の部分まで戻る)か、あきらめてコースアウトする。
しかし、アドレナリンが出ていて集中していたりすると一瞬の出来事さえもかき消されてしまう。
ましてやビック大会になるとゴールに親族がいてゴールする姿を見守っている。
草大会のメンタルとは違って気合が入っている。

きっと牧野選手もアドレナリンが出ていて集中しているあまり、ゴールまで突っ走ったのだろう。良くある事だ。

ゴール周辺の関係者の話しで中では、2本目の出場資格者が決定したのだから、2本目を滑らせては良いのでは?と言う意見も出ていた。既に1本目のリザルトがFIX(確定)されてしまったからだ。

しかし、本人は「これでたとえ良い結果が出たとしてもフェアじゃない」と、泣きじゃくりながらの自己申告だった。
結果、審判は選手の辞退を承認してDNQ(無資格者)。2本目の出場者リストに彼女の名前は載ることがなかった。
残念ながらこれで牧野選手の中学生の大会に幕を閉じる事になった。

見方によっては「当たり前の事をした。」と言う人もいるが、それぞれ選手の気持ちになって考えると、辛いだけでなく、選手によっては絶望的な感覚に陥る事もあるだろう。

この様な勇気が今後世界で活躍する選手に成長するしないの問題ではなく、私はこの選手の勇気がアスリートとして「魅力ある選手」になる可能性を秘めていると期待している。



【ゴルフはスポーツで唯一審判がいないスポーツ】
ところでゴルフは唯一審判がいない競技だと知っているだろうか?
スコアを決めるのも、救済の判断も、ペナルティーの判断も、すべては自己申告。その判断を同伴プレーヤーに確認してプレーを進めていく。
実はゴルフ界にも、この牧野選手のような自己申告によるエピソードが多数存在している。

その中でも特に有名なエピソードを紹介しょう。

伝説のゴルファー「ボビー・ジョーンズ」の実話である。
1925年の第29回全米オープンで、ボビー・ジョーンズは「アドレスの際、ラフにあったボールが動いた」と申告し、自らに1打罰を課した。
同伴プレイヤーのウォルター・ヘーゲンは「誰も見ていないので、ペナルティは必要ない」と進言したが、ジョーンズは「銀行で金を盗まなかったからといって誰も褒めない。ゴルファーとして当然の行為である」と聞き入れなかった。
この一打で最終的にはウィリー・マクファーレンとのプレイオフとなり、1度目の18ホールのプレイオフでは決着がつかず、2度目のプレイオフの最終18番ホールでボギー対パーの1打差で敗れた。
【ウィキペディア参照】

この実話に近い話しを映画化した「バガー・ヴァンスの伝説」(豪華キャスト:ウィル・スミス、マット・デイモン)は、かつて強かった時代の失ったマインドを、トーナメントに挑戦するうちに取り戻していくという内容である。
すべてのアスリート、保護者、コーチにオススメする映画である。



【一気に転落した女子プロゴルファーのマインド(実話)】
ゴルフの話しで有名な話しをもう一つ。
幼少期から天才と言われたある女子ゴルフ選手が、お父さんと二人三脚で念願のプロゴルファーになる事ができた。
そのお父さんはゴルフ指導も生活面もとても厳しく、その女子選手はお父さんの言いなりのままゴルフをし、お父さんの為にプロゴルファーを目指してきた。

ある、プロトーナメントで1打目のドライバーが右の深いラフに入ったかのように思えた。
しかし、キャディーのお父さんも「たぶん大丈夫だろう」と、暫定球を打たずに1打目の着地点まで行ったが、ボールは深いラフの中でなかなか見つける事ができない。
ティーグラウンドに戻って打ち直しか?というタイミングで、その選手は「ボールありました!」と見つけたようだった。

そのままプレーを続けトーナメント1日目を終えたが、なんと失格になってしまったのだ。

その女子選手がおこなった行為は、ポケットからスペアボールを取り出し、あたかもそこにボールがあったかのように、「ポトッ」と落として、プレーを再開したのだ。
その行為を観ていた観客が競技委員長に報告していたのだ。

お父さんに怒られるのが怖くてついそのような行動に出てしまったと言われている。
その女子の選手はそれ以降の試合に出場停止をくらい、精神的ダメージなのか2度とトーナメントに顔を出すことはなくなったそうだ。

この女子選手は、プロゴルファーになる事ためだけに努力をしてきたが、もっとも重要な「正直なマインド」を身に付ける事なくプロになってしまった。
またキャディーのお父さんも、ゴルフを通じて学ばなけれならない重要なマインドを教えるのを怠っていたのだろう。
残念な話しである。

【全中覇者!我満 龍治選手(北海道)の成功マインド】
2月に秋田県花輪スキー場でおこなわれた全国中学スキー大会の大回転で見事優勝を勝ち取ったのは「我満 龍治(北海道)」選手だった。
この優勝は「勝つべくして勝つ」ように導かれたと私は信じている。
なぜなら、彼は既に「一流プレーヤーへの分岐点」を通過し経験していたからだ。

彼の出場は大回転種目だけで、残念ながらスラローム種目は不出場だった。
あの大回転で優勝した「しなやかさ」があるのなら、だれもが彼のスラロームでの試合も観たかったはずだ。

彼も北海道予選のスラロームで片足不通過を自己申告して2本目を辞退したという。
旗門員から失格が出ていないので黙っていれば2本目に出場する事ができたのに・・・。

しかし、本人の中でそれで2本目を出場するなど受け入れる事ができず、自ら失格を申し出たのだ。
本人にとって、我々には想像を絶するほど本当に悔しい想いをしただろう。
彼も中学3年の最後の大会で、全国中学では2種目とも優勝候補だったからだ。

この様な悔しい想いを心に刻みながら、全中の大会に向けて努力してきたのだろう。
自らマインドを成長させ、その成長を土台に全国中学に望む事ができたのだ。
だから「勝つべくして勝つ」選手として私は注目をしていた。

彼は一流プレーヤーに必要なマインドを、この時期に習得、経験し、次への目標に向かっている。どのような「魅力的な選手」になるのか?実に夢のある話しで注目していきたい。

【それぞれのマインドはそれぞれのプレーに現れる】
私は良く選手やコーチに「普段の生活がプレーに現れる」と言っている。
選手の滑りを観ると、生活環境や、身の回りの整理の事など、なんとなくどんな生活をしているのかわかるものだ。

しかし、トップを争うにはそれだけじゃダメ。その選手の持っているマインドが影響してくるものだ。
特に選手生活を「長期で考えれるか?そうじゃなか?」でその影響が大きく変わってくる。

【一流プレーヤーは長期ビジョンを持っている】
かの有名なプロゴルフプレーヤー「トム・ワトソン」は心理学者でもある。
彼の考え方は実にユニークで一言一言が勉強になる事が多い。

「大事なパットに時間をかけると外す確立のほうが高い」という心理学の統計データーを元に、ワトソンのパットは打つのが早い。「考えて無いんじゃないか?」というほどで、カメラワークも追いつかないほどだ。
それでもメジャー大会で8度も優勝しているレジェンドゴルファーだ。
さらに彼の考え方はスケールがでかい。


その発言に驚いたのは2010年全英オープンでトム・ワトソンが59歳ので優勝するのではないか?と思われるようなトップ争いを繰り広げていた時の事。

最終ホール2打目グリーンから少々こぼれたボールを、これまた考えずに?簡単に打ってしまった。
速いグリーンを3mほどオーバーし、返しのパットが入らず優勝を逃してしまった。

彼のインタビューで印象的だったのは、インタビューワーが「なぜあのパットに時間をかけなかったんですか?」という質問に、「時間をかけても入らないよ。私はあの方法で既に8度もメジャーを勝ってるんだ。今回は入らなかった、ただそれだけだ」

統計的に時間をかけても入らないという確率を信じての発言だが説得力がある。ゴルフの大会を「点」だけでは見ていない、ゴルフ人生全体からの視点で大変スケールの大きい考え方だ。

ここで言いたいのは、長期ビジョンを持っている人は、目先の結果にとらわれないという事。
プレーヤー人生全体で物事を考えるのだ。
だから余裕も生まれ、行動に焦りがない。
そしてスケールのでかい結果を残せる。

考え方としてはジュニアオリンピックで結果が残せなくても想定内。この事が将来もっと自分に活かそう、その方がもっと何かすごい事が起こりそうという期待を持つこと。良く「ポジティブシンキング」って言うよね。

【アスリートの人生を左右するチャンス】
牧野選手や我満選手のように片足不通過でもついゴールしてしまう時がある。
その時、その選手の行動が人格形成する為に必要な要素を身に付けるチャンスでもあるという事を伝えたい。

長期で物事を考えるとユースやジュニア時代はゲームの結果より、もっと学ばなければいけない必要な「要素」が存在しているという事だ。それもどのタイミングで訪れるかは人それぞれだ。

すべてのスポーツにおいて正直になる事はその後のアスリート人生の大きく左右してくる。
そのチャンスは遅かれ早かれ誰にでも必要な要素であり、経験できたとできないとではアスリートとしての「魅力」が違ってくる。
「魅力」とは身に付けたくても付ける事はできないからね。
早い時期にそのチャンスに訪れる事ができれば尚良いだろう。

「見抜いてる人は見抜いてるもの」

日本のスキーヤーも、世界の一流アスリートと対等に話しができる選手が沢山排出される事を願っています。

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